種の会からのお知らせ

週刊メッセージ“ユナタン”20(はっと・なかはら・なな・池田すみれ)

≪ユナタン:20≫  at はっとこども園
~ 後味バツグンの隠し味 ~

平成28年7月21日  片山喜章(理事長)

 毎年、恒例になっている5歳児かもめ組のカレークッキング、かつて「やりきるクッキング」と称していました。グループのメンバーだけで、準備から後片付けまでやりきる保育です。
多くの子どもは、ジブンが、じぶんが、自分が、と主役意識をあらわにして、具材を切ったり剥いたりします。そこでモメて、トラブルになることがよくあります。“あ~、このガサついた姿は、はっとらしいな~”と以前なら苦笑していましたが、今は“これぞ、子どもの姿! 幼児はこうでなくっちゃ!”と本気で思えるようになりました。それぞれの思いを煮込みながらクッキングの用意をして、実際、作って、食べて、後片付けをする、その経験を、同じメンバーで、同じようにくり返す。この教育的意義をぜひ、ご理解いただきたいと願います。

1回目(6月8日)、こんな事がありました。Aちゃんが物怖じして、参加しようとしません。
何が原因なのか、担当の先生もよくわかりません。例え、やりたくなくても、させようとするのが日本の保育・教育の実態であり、保育者気質だと思います。もし、保護者が知ったら、お家に帰ってから「Aちゃん、どうしてしなかったの!」「ダメじゃ、あ~りませんか!」と叱責まじりの励ましを受けることは容易に想像することができます。

そこで、担当の先生は、彼女とあれこれ、話をして、Aちゃんは、同じグループのメンバーが、クッキングをしている様子を見学することになりました。「見る」という「参加」の仕方は、全くポジティブではないね~と、以前なら、そう感じるところですが、今は、“これも子どもの姿!”“幼児期は、これでよい”と本気で思えるようになりました。

クッキング保育に限らず、様々な協同的活動で大事にしなければならないのが「振り返り」の時間です。これは、はっとこども園のルーティン活動と言って良いと思います。何かに取り組んだ後、本の部屋をつかったりして「振り返りタイム」を設けます。ここは、以前も、今も変わらない、はっとこども園のすばらしいところです。
グループごとに集まって催される「振り返りタイム」では、「困ったこと」「なるほど、と思ったこと」「上手くいったこと、いかなかったこと」を話し合います。子どもたちも慣れたもので、「振り返り」のなかで出てくる意見には“的確さ”や“鋭さ”があります。このような取り組み、そして、このような経験が「小学校へいくための有意義な準備」とご理解ください。

「振り返り」では、Aちゃんは、何も発言せず、ただ聞いているだけの「参加」でしたが…
ところが「次は、みんなと一緒にクッキングがしたい」と、「振り返りタイム」が終わってから、担当の先生にこっそり、伝えたのでした。

2回目(6月15日)のクッキングの前日、Aちゃんのことが気になっていた担当の先生は、「明日は、前と同じカレーを作るよ。Aちゃんもみんなといっしょにしようね」と軽く、実は、恐る恐る声をかけました。すると、Aちゃんはにこやかな表情で「うん。」とうなずきました。
その瞬間。担任は、思わず、心の中で“バッチグー”(古い)と叫んだのでした。

当日、クッキングが始まり、担当の先生は、「前は、Aちゃん、みんなと作れなかったけど、今日は、みんなと一緒にしたいんだって」と話をしました。少しお節介かな、と思いました。
すると、Bちゃんが「Aちゃんってさ~、お料理、むっちゃ上手やねんで~。な~、Aちゃん」と応えてくれました。Aちゃんの方を見ると…、嬉しそうに笑顔を返していました。

子どもどうしで話し合って役割分担し(ここが教育)、人参を切るのが、CちゃんとAちゃんの担当に決まりました。AちゃんはBちゃんの言葉に勇気をもらったのか、Cちゃんは「人参、切ろうか?」と誘うと、「うん」と頷き、ピューラーを握りしめ、半分に切った人参をまな板の上にのせて、上から下へ、丁寧に、そして真剣に人参の皮を剥き始めました。すかさず担当の先生は「Aちゃん、上手やん! 猫の手も上手やん! 人参、いい大きさやん」と、取ってつけたような褒め言葉を放ちました。すると、他の子どもたちも「ほんまや、いい大きさや~」「ほんま、ほんま」と後に続き、Aちゃんをみんなで褒めて、認めるような発言が続きました。

このようすをどのように見ますか? 私はグループのメンバーの心遣い、やさしさを感じます。1回目の時、Aちゃんがうまく入れず、「見る」という「参加」だったことをグループのメンバーは知っています。1回目の「振り返り」の時も、無言だったことを知っています。けれども、今回は(前日の約束どおり)参加しました。そして、担当の先生は、Aちゃんのご機嫌を伺いながら、けんめいに促していました。メンバーの子どもたちは、そんな「空気」を感じ取ったのだと思います。Aちゃんのことを少し大げさに褒めたり、あえて“誘いの言葉”を投げかけたり、自然な感じを装いながら、メンバーはAちゃんを支えようと努めていたのだと思います。

BちゃんもCちゃんも私の前では、甘えたり、時には悪態をついたりします。しかし、ここ一番、仲間が窮地に居ることを察すると、自然な形でやさしさが発揮できる、この辺が、すばらしいところです。“これぞ、子どもの姿! 幼児はこうでなくっちゃ!”と改めて感じました。
もし、1回だけで終わっていたら…。このような姿を引き出した隠し味は「同じメンバーでのくり返し」という教育方法です。※ 8月は、ユナタンはお休みです 【資料提供:飯銅、溝上】

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≪ユナタン:20≫  at なかはらこども園
~ 「誕生会」で「成長」のプレゼント ~

平成28年7月20日  片山喜章(理事長)

 今年度の誕生会は、5歳児ぞう組の子どもが3人、もしくは2人一組で「司会進行」「誕生児へのインタビュー」「各クラスからの歌のプレゼント紹介」「手あそび」の役を担っています。
彼らは、誕生会の1週間ぐらい前から、月担当の保育者と打ち合わせを行ないます。打ち合わせ内容は、司会進行、インタビュアー、歌紹介などを“誰が”担うのか、その“人選”からです。そして、手あそびは“何をするのか”を決めます。司会進行やインタビュー、歌の紹介は「原稿」を使って行ないますから、担当する子の“ひらがなへの興味や関心”と結びつくだけに、その人選びに関しては、保育者の側も、興味や関心が生れます。

4月、子どもたちに伝えると、「やりたい!やりたい!できるし~」と自信満々の返事が返ってきて、3名の「お当番」が話し合いました。Aさんが「わたし、司会、しようか」と切り出すと、Bさんは「Aさん、ひらがな上手やし、おねがいするわ」と、この役を担うのに必要な力について理解しているようです。Cくんは、原稿を見ながら各クラスの歌の紹介をすることになりました。
次の日、3人と担当で、原稿の読み合わせを行ないました。Cくんが「原稿」を読みながら詰まる場面があると、すかさず、Aさんがフォローします。「これはね、○○ってよむねん」「もう一回やってみる?」なんとなく国語の先生と生徒のように聞こえて、担当も苦笑してしまいました。

「3人で進行するという大役をあたえる」「何度も考えながら練習する」、そんな保育(教育)を推し進めると、どんどん主役意識は高まって、本番をイメージする力を育みます。このような経験は、クリエイティブとは言えませんが、「社会性」を育んでいる、と言って良いと思います。
誕生会本番、途中で、Cくんが言葉につまってしまったとき、舞台袖(ベンチ)に座っていたBさんは、さっとCくんのところへ行き、隣で一緒にCくんのセリフを手伝う姿がありました。

4月の誕生会で、この「当番の姿」を目の当たりにした、ぞう組の子どもたちは、ざわつきます。「自分の番が来たら、どの役にしよう」、「うまくできるかな、どきどきするな~」と期待の言葉がわいわい飛び出しましたが、その中にリンとした志が芽生えているのが、感じ取れました。
5月担当のDさんは、このとき「次、自分はゼッタイ、司会になるんだ」と密かに心に誓っていました。そして5月の話し合いの時、真っ先に「司会をする」と名乗り出て、認められたのです。
5月のメンバーは、4月と異なる進行案を出しました。最初と最後の自分たちの立ち位置について、3人で舞台(巧技台)に上がるのではなく、1人ずつ上がってしようと。そして本番、その通りに行ないました。よく覚えていたな、と感心しましたが、子どもの能力は、そのくらい高いのです。それ以上にかなり時間を経ても、細かな点を変更しようと考えて実行した姿は見事です。
6月の役決めでは、「司会やりたい!」と1番に言い放ったEくんの勢いに押されて、あとの2人は承諾しました。けれども、いざ、はじめると、なかなか台詞(ひらがな)が言えません。
心配になったFさんは、Eくんの横に寄り添っていっしょに読みました。Eくんも自信をなくしたようで、自分が適役かどうか、戸惑っている様子が伝わってきました。Fさんも複雑な表情で、担当の保育者の方を眺めます。2人の気持ちは複雑です。Eは「やってみたい」といったものの自分にはこの役はできない、他の役ならできる。Fは、この役、自分にはできるが、Eには無理そう。けれども、面と向かっていうことはできない。大人社会の気遣いと同じです(必ずしも、良い事)とはいえませんが)。結局、担当保育者のサポートで、EもFも納得して役割を変えました。

そして今月、担当の子どもたちの資質が一層、高まります。「@@くん」ではなくて「@@くんです、って、ですを入れた方がよくない?」と保育者がシナリオに手を加えます。打ち合わせ中も「ほんと、このシゴト(進行役)たのしい、ずっとやりたかった」と悦に浸る会話もありました。
圧巻だったのは、誕生会当日、誕生児の1人が欠席していることが、開始後、判明し、インカムを通して、担当保育者に伝わりました。担当者は、進行中のGくんに耳打ちしました。台本にはない台詞です。Gくんは、「うん、わかった」と頷き、何事もなく「すくすくグループの○○くんは、今日は、お休みです」と、巧みに切り抜けました。さらに、すばらしい場面は続きます。

いつも乳児は持続時間の関係で、誕生児紹介の手前で入室します。誕生児の1歳児の子が「誕生児紹介」に間に合いませんでした。進行役のGくんが名前を呼んでも、その子はいません。会場はざわつきます。担当する保育者は、自分が入るべきか、それとも子ども任せでいくのか、先が読めない状況だけに迷います。しかしGくんは、臆せず、じっと入り口の扉の方に目をやります。ほどなく担任に連れられて、その子が入ってきました。それをみて、Gくんは、即座に、遊戯室入り口の方に視線を飛ばして、「たっちグループの○○くんです」とコールしました。(ナイスです!)

毎月の行事である誕生会は、先生が司会進行し、子どもたちも、それを楽しみにするのが、ふつうです。なかはらこども園(法人内に他に2園、取り組んでいます)では、5歳児の保育の一環として取り組んでいます。進行チームは毎回、数名ですから、担当する子どもたちにとっては、ある意味、運動会や発表会よりも、主役意識を強くもつ経験になります。また、1週間くらい前から子どもたちの話し合いをファシリテートするのは担任ではない保育者が輪番に行いますから、担任外のセンセイとの関係も強くなります。同時にファシリテートする力量も磨かれると思われます。

子どもたちの姿を注視していると、前回の進め方をアレンジして、オリジナリティを生み出そう
とする意欲や姿勢を垣間見ることができます。誕生児は、暦のうえで、1歳ずつ成長する姿をお祝いしてもらいます。5歳児の子どもたちは、友達の成長をお祝いする中で、主役経験を通して、さらに成長するようです。※ユナタンは8月はお休みです。【資料提供:横田、伊勢、鹿野、小松)

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≪ユナタン:20≫ at ななこども園
~ 経験を積み上げるための環境 ~

平成28年7月22日  片山喜章(理事長)

 4月に「フリーデイ」(遊戯室に多彩な遊び環境をコーナーとして設定し、幼児クラス全員がお昼まで自分が選んだ遊びをする。保育者もそれぞれの担当コーナーで援助する)が、スタートして以来、「積み木コーナー」には、5歳児ばら組のAくんが毎回と言ってよいほど居ます。
Aくんはクラスのお部屋で遊んでいる時も積み木に興じて遊んでいました。その姿は、職人さんのようです。「ビル」や「動物園」「駅」「お城」「駐車場」など、作品も実に多彩です。

そんなAくんの“腕前”は、クラス中に知れ渡っています。「フリーデイ」では、Aくんの作品を見て、同じばら組の子どもたちが「一緒に作りたいからいれて~!」「Aくんすごいな~!」「どうなってるん、これ~?」とAくんの周りには友達が集まり、Aくんも得意げに「これはな〇○やねん」「これはこうやってするねんで」と話をしてくれます。Aくんは、周囲からちょっとした「積み木名人」のような存在になっているようです。
一方、同じばら組のBくんは、「フリーデイ」の時は、その時々によって、選ぶコーナーはまちまちで、いろんなコーナーでまんべんなく過ごしているという印象がありました。
ある日のこと、そのBくんが、「積み木コーナー」にやってきました。休日に家族で動物園に行った印象が大きかったのか、「長さのある積み木」を使って、どんどんどんどん動物の部屋(檻?)を作って、広げていきます。その中にゾウ、キリン、馬などのフィギアの動物(付属品)を置いて、遊戯室の広い平面を活かして、さながら「アドベンチャーワールド」のような大きな動物園を作っていきました。※「積み木コーナー」には、動物や人のフィギアを備えておくことが「保育環境スケール」のなかでも記載されており、それに則って積み木コーナーを設置しています。

今までにはなかった「平面的な広がり」を展開するBくんの“腕前”に、他の5歳児も影響されて、「もっと広げようぜ」と言わんばかりに、Bくんと一緒に大きな動物園を作り始めました。
その様子を少し離れたところから見ていた数人の3歳児ゆり組の子も「おっ、今日は、いつもと違うな、なんか、おもしろそうやんか」と思ったのか「ナニ、これ~?」と興味を示してやって来ました。このコーナーは、もともと「木製電車&線路コーナー」と隣接しています。
この設定は、実におもしろく、以前、私が見た時も「電車」と「線路」と「積み木」が合体して「駅ビル」の中を電車が走る光景に出会いました。この設定をBくんはうまく活かしました。

そんなゆり組の子どもたちに、Bくんは「ここが、スタートで、ここから入っていいよ」と、誘います。彼らは嬉しそうに「電車」を走らせて「アドベンチャーワールド」のツアーを楽しみました。そして、その場の雰囲気は一気に活気づきました。
この活気にあふれた状況のなかに、Aくんは居ました。彼がどんな心持ちで、そこに居たのか、ふと気になりました。ふだん、自分の保育室で「積み木」に興じることの多いAくんは、狭いスペースなので拡げようがなく、積み上げて「立体的」なものつくることが日常でした。しかし、「フリーデイ」は、広いスペースのおかげで「平面的」なものを作って拡げる事が可能です。
逆に、ふだん「積み木」をしなかったBくんは「家族で動物園に行った楽しい経験」が「広いスペース」に触発されて、にわかに「積み木」に目覚めたのかもしれません。

次の週の「フリーデイ」。Aくんは「遊園地」らしきものをつくっていました。Bくんもいました。Bくんは、「動物が住むマンションやねん」と言って積み木を高く積み上げていました。
Bくんのマンションが、かなりの高さになり、積み木を一番上に置いたその瞬間、「カン、カン、カーン」と、その積み木が、音を立ててマンションの一番下まで落下していきました。

が、マンションは、崩れません。そのマンションには、いくつもの梁(はり)のようなものが組まれており、少々の衝撃では崩れないような“設え”になっていました。そしてまた、あの時のように、Bくんのところに、3歳児ゆり組の子も混じって、どんどん友達が集まってきました。
「カン、カン、カーン」、「動物マンション」に“積み木を落とし”の音が、何度も響きます。
その様子を見ていたAくん、うつむき加減で複雑な表情をしているように見えました。それでも、Aくんは、遊園地を作り続け「メリーゴーランドできたで~」と自分の“腕前”をアピールしていました。積み木職人の職員気質が、そう言わせたのかもしれません。

AくんとBくん、2人は、この経験から何を学んだといえるでしょう。私たち保育者は、この2人の子どもの姿から何を学んで、今後の教育・保育に活かすべきでしょう。
Aくんのプライドが傾いて葛藤したなら、それは理解できます。では、Bくんは、Aくんに対して、何か勝ち誇ったような感覚を抱いたでしょうか? そんなことよりも、Aくんの“職人技”については、よくわかっていたはずです。Aくんの存在が、制作意欲を刺激した隠れ要因だと捉えるのが妥当だと思います。それから「家族で行った動物園の豊かな思い出」もまた、制作意欲を促したと思われます。そして、やはり、「広い遊戯室のコーナーという環境」が引き金になってBくんに潜んでいた制作欲求が表に出てきた、と解して良いと思います。

当事者たちの意識、無意識に関係なく、このようなドラマを積み重ねていくことで「仲間意識」あるいは「集団づくり」は、醸成されていくと思われます。そして、より豊かな「仲間意識」を育むためには「フリーデイ」に代表されるように、自分で活動が選択できて、自分のペースや持ち味が発揮できて、尚且つ、異年齢で学び合えるような「コーナー」という自在な環境が必要不可欠であると考えられます。どうか、ご理解ください。  【資料提供:川端里穂・徳畑等】
※    「ユナタン」は、今回をもって終了とします。

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≪ユナタン:20≫ at 池田すみれ
~ 「保育参観」を終えて(皆様へのお手紙です) ~

平成28年7月22日 片山喜章(理事長)

 6月7日、10日、15日と保育参観が開催されました。園として(センセイたち)は、「より良い教育内容」と「見ていただくための教育場面」は必ずしも同じではないことを痛感しました。
《コーナー・ゾーンの教育的価値》
昨今、全国、どの小学校でも「アクティブラーニング」(ネット検索してください)が論議されています。中教審は、夢と希望を語りながら、その方向で改革を進めようと画している最中です。
池田すみれで展開されている、コーナー・ゾーンの環境型の教育は、まさに、この「アクティブラーニング」の幼児教育版の一端であるといってよいと思います。
《いろいろ学んで試行して「手応え」を感じた職員たち》
「コーナー・ゾーンの教育」について、センセイたちは、他園を見学し、また他園からのアドバイスをもらって、試行を重ねて、今では、担任各自が確信を持って語れる教育方法でした。
それは、子どもの姿に現れ出ます。いろんなことを自分で選んで、考えて、例えば、「製作」が「ごっこあそび」とつながって発展したり、友達同士で相談したり、ぶつかりあって決める姿を見ると感激し、私にまで報告します。まさに国が言う「協同的学び」と合致した子どもの姿になりつつあります。これまでの「担任主義」とちがって、センセイたちも、より深く話し合う環境ができてきました。いわゆる「チームティーチング」です。この点もまた、国が示している教師集団のあり方です。そして、園長ではなく、センセイたち自身が、「ぜひ、保護者の方々にも伝えたい」と強い気持ちを抱くようになって、今回の「参観内容」になりました。この点をご理解ください。
《「保育参観」には、ふさわしくない内容でした》
けれども、わざわざ、この日のために「お休み」を取って参加されたみなさまには「失望」をあたえた、と思います。私も全く同じ気持ちです。ご存知のように、3年前から関西の法人各園が、相互に保育を見せ合って、保育を評価し合っています。今年度は、コーナー・ゾーンの保育に絞って、レイアウトや遊び込みの状況、教材の研究、保育者の振る舞いについて、シビアに検討しています。それを経験しているセンセイたちは、この教育方法に惚れ込んで、また、自信(過信)をもって「保育参観」をすべて「フリーディ」と称して実施したい、と願って、参観に臨みました。

関西4園が集まった評価の日、私もいっしょでした。そこで、「保育参観はこの方法を見ていただく!」と勇ましく訴えてくるセンセイたちに、思わず、「ゼッタイ!クレームが来るよ」と返しました。しかし、「変更」の指示までは、だせませんでした。なぜなら、この教育方法自体、すばらしいものだからです。ただ、保育参観の日のメニューとしては、ミスマッチだと思います。
けれども、センセイたちの意欲に押されて「実際にやってみて、後で、クレームが来たら、自分たちで説明すれば・・・」とやり過ごしてしまいました。(ですから、私にも責任はあります)
≪コーナー・ゾーン(フリーデイ)》にはならない。クラス別の活動も重要≫
当日の様子は、尋ねていませんが(みんな落ち込んでいるので聞けない)、たくさんの保護者が来る、というだけで、もはや、本来のコーナー・ゾーンの教育にならないことは、自明の理です。
また、全園、クラス活動をとても大事にしています。そこで展開される「担任の腕前」も見ていただくことは大事です。それがなかったのは、参観した保護者として、ほんとうに落胆します。

「子どもが、楽しいということ」と「親が観て満足すること」は一致しない場合があります。
その視点にセンセイたちの理解が及ばなかった、というのが実情です。このコーナー・ゾーンの教育とは、別のところに問題がありました。コーナー・ゾーンで15分くらい過ごした後、リズム、絵画、製作等、きちんとしたクラス活動をお見せすべき、というのが、ごく、ふつうの考え方です。
参観した保護者の方々の落胆、失望のお気持ちはよく理解できますし、妥当だと思います。まだまだ、勢いだけでがんばるセンセイたち(園長、主任も?)が多いですが、“勢いがないよりマシかな”と受けとめていただくとひじょうにありがたく思います。よろしくお願いいたします。
《アンケートはかえってマイナス》
園からの情報ですと、これに端を発して、「アンケート」を実施されるようです。教育内容については、園側からのアンケートなら、意味はありますが、「保護者による保護者への教育内容に関するアンケート」は、センセイたちにとって、精神的に大きなダメージをあたえてしまいます。
一方で、「直接、園にあれこれ言えばいいのに」、といわれても、保護者の方もなかなか言いづらい状況で、また、言っても無視される、などの現実がないとは言えないと、私は感じています。
ですから、アンケートはやめてください、とは言えません。回収して「要望」を出されるとき、国の「教育要領」「保育指針」の文言に沿った内容ならば、真摯に受け取るべきだと思います。
しかし、それ以上に、数名の代表者と園の管理職とで、話し合いをしていただきたいと思います。
《保護者の声は園長の10倍以上》
かつて園長や同僚がどれだけサポートしても、回復しないで苦しんでいたセンセイガいました。
しかし、保護者が動き、子どもたちともに「手紙」を1回、書いてくださったら、いっぺんに元気になって復活した例があります。園長が10回、褒めるより、保護者の「ありがとう」の一言で、センセイたちは嬉しくなって元気がでます。その逆もまた事実です。今回、「コーナー・ゾーン」の教育のすばらしさを訴えたいために、すべてのクラスの参観で披露した“配慮の無さ”と“空気を読めなかったこと”をセンセイたちは悔いています。保護者の方と顔を合わすのが辛い、気が引ける、と、とても凹んでいるセンセイたちがいます。どうか、この状況をお察しください。

私は、コーナー・ゾーンの教育的価値を高め、そのすばらしさを理解していただくためにも、クラス活動にもっと力を注ぎ、保育の腕前を上げてほしいと願っています。そして、今、「具体的改善策」を検討しています。夏が過ぎれば、運動会モードに入ります。クラスを中心に、種目内容も練習方法も、工夫していきたいと考えています。  ※ 「ユナタン」は、8月はお休みします。